データを使えばわずか数ヶ月で投げたい変化球が投げれる時代に

  • 2020年8月11日
  • 2020年8月11日
  • Baseball

ずっと書こうと思っていたのですが書けなかったネタを今日は書きたいと思います。昔からデータでスポーツを見るのが好きな僕ですがここ近年で最も感動したことの1つと言ってもいいのではMLBでシンシナティ・レッズで秋山とチームメイトのトレバー・バウアーの存在です。

球速が188キロを記録 ※助走付き

昨年オフは日本にも来ており、今永選手との交流やメディアへの露出もあり、日本での知名度が上がってきていますが彼を一気に有名なさせたことの1つとしてこの動画があるかと思います。

助走をつけているとはいえまさかの116.9mph、つまりは188.1km/hです。何を隠そうこの助走をつけて投げている選手がトレバー・バウアーです。

メジャー科学時代の象徴 バウアー投手、日本帯同記

彼についてはこの辺りをぜひ読んでいただきたいのですが球界きっての頭脳派、野球オタクとも言える存在で探究心が絶えません。時には交代の指令にキレてバックスタンドにボール投げ込んだり(そもそもで遠投としても肩が半端ないのですがw)、ドローンで指を怪我したりとピッチ外でも話題が絶えない彼ですがいま最もメジャー、いや、世界中でデータでピッチングを追求している存在だと思います。

投げたい変化球を短期間でマスター

冒頭で最も感動したと書きましたが何に感動したかと言えばこちらです。

Bauer eager to unveil his offseason project
Tribe righty replaces slider with more comfortable version, compares it to Kluber slurve

英語ですが簡単なのでぜひ読んでいただきたいと思いつつ、簡単に要約すると、

「2017年シーズンのオフに自分の足りないものを考え、同僚のコーリー・クルーバーやブルージェイズのマーカス・ストローマンのようなスライダーをデータやハイスピードカメラを駆使して覚えたよ」

という感じです。凄いざっくりな訳ですし、伝えたいことをまとめているので厳密性についてはご了承ください(笑)

そしてこの記事に出てくるドライブラインベースボールが僕がいま最も気になっている施設であり、コロナがなければ今年見学しに行こうと思っていた施設でもあります。昨年のオフにはこの施設に選手を派遣しているNPBの球団もありましたし、ソフトバンクがキャンプにコーチとして招聘していたので知っている方もいるのではと思います。

その最先端のドライブラインで2017年のオフに新しくスライダーを覚えたバウアーですが、そのスライダーが2017年から2018年にどのように変化しているかを見てみましょう。

横の変化量や回転数をより大きく

球数割合球速縦変化量横変化量回転数
2017250.8%84.739.20.82,506
201839113.7%82.043.213.52,666

出典:Savant 球速はマイル、変化量はインチ(以下、同様)

そもそもで2017年シーズンはほぼ投げていなかったスライダーですが、2017年のオフに習得し、2018年では全体の投球割合で13.7%を占めるまでになっています。2017年から2018年の変化としては投球数もそうですが、横の変化量と回転数が大きくなっているのがわかります。

では、この2018年のバウアーのスライダーが目標としていたコーリー・クルーバーやマーカス・ストローマンのスライダーと比べてどうだったのか見てみたいと思います。

各指標が目標とかなり近しい数値に

球速縦変化横変化回転数
バウアー8243.213.52,666
クルーバー83.838.215.22,607
ストローマン85.239.911.52,659

上を見てもらえればわかりますが完璧に一致とは言わないまでも各指標がかなり近しい数値になっているのがわかるかと思います。バウアーは2017年はほぼ横に動かないスライダーでしたが、横の変化量を目標としていた2人の変化量にかなり合わせに来ています。今のMLBでは20センチ以上横に動くとスライダーは効果的と言われているのでそれらをまさに体現している形とも言えます。

2018年の成績は大きく向上し、価値も10億円以上も向上

では、このように自分の思うようなスライダーがが投げれるようになった2018年シーズンのバウアーの結果はどうだったのかを見てみましょう。

Season勝利敗北試合数投球回数防御率WHIP奪三振数WAR
201717932176.14.191.371962.8
201812628175.12.211.092215.8

勝利数は減っていますが、防御率4.19から2.21と大きく改善しています。また、現代のMLBにおいて純粋に投手の能力を測るWHIPも大きく向上し、全選手を平等に評価する指標であるWARも2.8から5.8へと2倍以上の伸びとなっています。ちなみに今のMLBにおいてはWARが1増えると選手の年俸が5-6億円は増えると言われている時代ですのでWARを3も増やしたバウアーは自分自身の価値を10億円以上も向上させていると言えます。

データは万能ではないが”使える”

誰しもがバウアーのように自分の思うような変化球を投げれるようになり、成績を大きく向上させれるわけではないでしょう。しかし、このようにデータによって可視化されたことで何かを目指す際に抽象的な「大きく横に曲がるスライダー」と言った話ではなく、「横の変化量がいくつで、回転数が…」とより具体的な話になり、PDCAが回しやすくなったのは間違いないと思います。

個人的にはデータ万能主義ではないのですが、スポーツの世界にもこのようなデータ活用事例はたくさん出てきており、データを使わない手はないと思っています。そして何よりも間違った指導や誰かの経験による思い込みなどで”不正解を強要する”ようなことが減ると良いなと思っています。

(ちなみにデータ万能主義だと去年のデータで未来の成績を予想するので今年の菊池雄星のようなフォームチェンジによる覚醒を考慮できないのはとっても頭でっかちだなと…。)

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