先日とある友人と「Jリーグユース出身は大成しない」という話は本当なのかというので盛り上がっていました。まぁこれはJリーグ好きな人ならたまーに聞く話で日本は高校サッカーも人気ですし、さらには大学経由でプロに行くパターンも多く、Jリーグの各チームが持つユース出身の選手がそこまで活躍していない、高校サッカー出身や大学サッカー出身に押されているのでは?という話です。
ちなみに僕が大好きなアオアシという漫画でもセレクション上がりの阿久津が「ユースは高校より精神力が弱い」とユースを揶揄する場面もありますね。(アオアシ自体、ユースの話で阿久津もユース所属なのでユースが大成しないと言っている訳ではないと思いますが…。)

漫画にも出てくるこの噂が本当なのかを今回は過去5年のJリーグのベストイレブンメンバーの出身を見て検証してみました。
■2019年のJリーグベストイレブン
ポジション | 名前 | チーム | 出身 |
GK | 林彰洋 | FC東京 | 流通経済大学 |
DF | 室屋成 | FC東京 | 明治大学 |
森重真人 | FC東京 | 広島皆実高校 | |
チアゴ・マルチンス | 横浜FM | 海外 | |
MF | 橋本拳人 | FC東京 | FC東京ユース |
喜田拓也 | 横浜FM | 横浜FMユース | |
アンドレス・イニエスタ | 神戸 | 海外 | |
FW | ディエゴ・オリヴェイラ | FC東京 | 海外 |
永井謙佑 | FC東京 | 福岡大学 | |
仲川輝人 | 横浜FM | 専修大学 | |
マルコス・ジュニオール | 横浜FM | 海外 |
まず出身の前に横浜FMとFC東京の多さと言ったら…特に昨年の2019年は優勝が最後までこの2チームでもつれるという白熱したシーズンでしたので、この2チームから多く選ばれています。ちなみに筆者は最後の優勝決定戦を現地で観戦していました。
ユース出身者はMFの橋本拳人(FC東京ユース)、喜田拓也(横浜FMユース)の2名。11名中2名なので18%となっており、若干少ない印象。最も多いのが大学出身の4名と海外の4名で合計8名。高校出身は1名となっています。
ただ、これ調べてみると少し面白かったのがGKの林彰洋は柏レイソルのジュニアユースに所属していたそうですが、全国高等学校サッカー選手権大会に出たかったため高校の部活に進んだそうです。また、DFの森重真人はサンフレッチェ広島のジュニアユースに所属していたのですがユースへの昇格が叶わず、その悔しい気持ちを胸に広島皆実高校へ進学し、プロ入りしています。
ユースからプロへは2名ですがジュニアユースも含めると4名が所属していたことになりますね。
■2018年のJリーグベストイレブン
ポジション | 名前 | チーム | 出身 |
GK | チョン・ソンリョン | 川崎F | 海外 |
DF | 西大伍 | 鹿島 | 札幌ユース |
エウシーニョ | 川崎F | 海外 | |
車屋紳太郎 | 川崎F | 筑波大学 | |
谷口彰悟 | 川崎F | 筑波大学 | |
MF | チャナティップ | 札幌 | 海外 |
家長昭博 | 川崎F | G大阪ユース | |
中村憲剛 | 川崎F | 中央大学 | |
大島僚太 | 川崎F | 静岡学園高校 | |
FW | ジョー | 名古屋 | 海外 |
ファン・ウィジョ | G大阪 | 海外 |
この年は川崎フロンターレ連覇のシーズンということもあり、フロンターレからは最多の7名が選出。車屋、谷口は同年代で高校と大学が一緒の先輩後輩の関係なので2人が揃って選ばれるのは少し感慨深いものがありますね…。
ユース出身者はDFの西大伍(札幌ユース)、MFの家長昭博(G大阪ユース)の2名で2019年と同じ人数に。今回の最多は海外出身が5名、次いで大学出身が3名、高校出身が1名となっています。
個人的にはMFの中村憲剛が中央大学出身とは知らず…中央大学は大学サッカーの名門です。
■2017年のJリーグベストイレブン
2017 | 名前 | チーム | 出身 |
GK | 中村航輔 | 柏 | 柏ユース |
DF | 西大伍 | 鹿島 | 鹿島 |
昌子源 | 鹿島 | 米子北高校 | |
エウシーニョ | 川崎F | 海外 | |
車屋紳太郎 | 川崎F | 筑波大学 | |
MF | 中村憲剛 | 川崎F | 中央大学 |
井手口陽介 | G大阪 | G大阪ユース | |
山口蛍 | C大阪 | C大阪ユース | |
FW | 興梠慎三 | 浦和 | 鵬翔高校 |
小林悠 | 川崎F | 拓殖大学 | |
杉本健勇 | C大阪 | C大阪ユース |
この年は川崎フロンターレが悲願の初優勝ということでフロンターレから4名選出されています。あとは鹿島とC大阪が2名ずつという形に。
ユース出身者はGKの中村航輔(柏ユース)、DFの西大伍(札幌ユース)、MFの井手口陽介(G大阪ユース)、山口蛍(C大阪ユース)、FWの杉本健勇(C大阪ユース)の5名とここまでで最多になっています。大学出身は3名、高校出身は2名、海外は1名となっています。
ちなみにDFの昌子源はG大阪ジュニアユース所属でしたが、ケガが原因で退団をしています。同様にFWで2017年のMVPである小林悠は川崎フロンターレのユースセレクションを受けるも落選し、高校と大学に進み、プロ入りしています。
■2016年のJリーグベストイレブン
2016 | 名前 | チーム | 出身 |
GK | 西川周作 | 広島 | 大分ユース |
DF | 槙野智章 | 浦和 | 広島ユース |
昌子源 | 鹿島 | 米子北高校 | |
森重真人 | FC東京 | 広島皆実高校 | |
塩谷司 | 広島 | 国士舘大学 | |
MF | 阿部勇樹 | 浦和 | ジェフ市原ユース |
柏木陽介 | 浦和 | 広島ユース | |
中村憲剛 | 川崎F | 中央大学 | |
齋藤学 | 横浜FM | 横浜FMユース | |
FW | 小林悠 | 川崎F | 拓殖大学 |
レアンドロ | 神戸 | 海外 |
懐かしの1stと2ndステージに分かれていた時代ですが2ndステージ優勝の浦和から多く選出されています。鹿島は年間総合優勝でしたが後半の失速もあってわずか1名となっています。1stと2ndともに頑張った川崎フロンターレが多いですね。
ユース出身者はGKの西川周作(大分ユース)、DFの槙野智章(広島ユース)、MFの阿部勇樹(市原ユース)、柏木陽介(広島ユース)、FWの齋藤学(横浜FMユース)の5名となっています。大学出身は3名、高校出身は2名、海外は1名となっています。
昌子源、小林悠については2017年でも書いた通りですが塩谷司は徳島ヴォルティスの前身の大塚FCのジュニアユースに所属しており、その後高校と大学に進み、プロ入りしています。
■2015年のJリーグベストイレブン
2015 | 名前 | チーム | 出身 |
GK | 西川周作 | 広島 | 大分ユース |
DF | 槙野智章 | 浦和 | 広島ユース |
太田宏介 | FC東京 | 麻布大学附属高校 | |
森重真人 | FC東京 | 広島皆実高校 | |
塩谷司 | 広島 | 国士舘大学 | |
MF | 金崎夢生 | 鹿島 | 滝川第二高校 |
遠藤保仁 | G大阪 | 鹿児島実業高校 | |
青山敏弘 | 広島 | 作陽高校 | |
FW | 大久保嘉人 | 川崎F | 国見高校 |
宇佐美貴史 | G大阪 | G大阪ユース | |
ドウグラス | 広島 | 海外 |
この年は広島が年間総合優勝しており、その広島から最多の4名が選出されています。
ユース出身者はGKの西川周作(大分ユース)、DFの槙野智章(広島ユース)、FWの宇佐美貴史(G大阪ユース)の3名となっています。この年は高校出身がここまでで最多の6名、大学と海外が1名ずつとなっています。
それぞれの出身の割合は?
ここまで過去5年のJリーグベストイレブンの出身を見てきましたが果たしてJリーグユース出身がどれぐらいの割を占めているのか見てみたいと思います。ちなみに複数回選手されている選手もいますが、年ごとに考えるので2回選ばれていても1人と数えず、そのまま2人と数えます。なので分母はベストイレブン(11人)×5年なので55人となります。
Jリーグユース出身は最多の17人で30.9%に
出身 | 人数 | 割合 |
Jリーグユース | 17 | 30.9% |
大学 | 14 | 25.5% |
高校 | 12 | 21.8% |
海外 | 12 | 21.8% |
上記が55人の内訳ですがJリーグユース出身者が最多の17人で30.9%とという形に。この数字だけを見れば「Jリーグユース出身は大成しない」というのは間違っており、むしろ大成しているとも言えます。付け加えておくと、林彰洋や森重真人などの例も広義でJリーグユース出身と捉えるのであればその数は更に増えます。こうやって考えるとJリーグのユースチームは育成機能を十二分に果たしており、ユースからプロへというのは重要なステップになっているとも言えるでしょう。
日本代表のJリーグユース出身者は?
ちなみにJリーグベストイレブンではなく、日本代表での割合についての考察は上記の記事で触れられています。最新のロシアW杯でみるとメンバー23人中、高卒が10人、Jリーグユース出身が10人、大卒が3人となっており、ここでも高卒に並んでJリーグユース出身が最多となっています。